AYUMU SAITO
AYUMU SAITO

近代五種選手・才藤歩夢
キング・オブ・スポーツに挑む力の源とは

フェンシング、水泳、レーザーラン(射撃+ラン)、
オブスタクルという全く異質な競技の数々。
1日の間に、1人で5種目へと挑戦する近代五種は、

その過酷さと深い歴史から
「キング・オブ・スポーツ」とも称されるほど。
そんなハードな競技へ、幼い頃より
万能性を養いながら挑み続けている才藤選手に、
多種目だからこその魅力を語っていただきました。

CAREER

父親の影響を色濃く受けて
近代五種に精励。

得意な種目はフェンシング

父は元々陸上選手で、社会人になるタイミングで近代五種を始めたのですが、その環境下で育ったので、私も物心ついた時から何かしらのスポーツが身近にありました。それが段々と近代五種へと代わっていって、今までずっと続けてこられています。父親の経験則から、欧米の選手と比べて日本人はどうしても体格差があるので、水泳やランはある程度できても、フェンシングで負けてしまって勝っていけないと。そこで高校生の時から、本格的にフェンシングに力を入れ始めました。高校でスタートというのも、フェンシング選手の中では少し遅いほうかもしれませんが、少しでも早く始める方がいいということでフェンシング部がある学校を選んだんです。大学でも同じく部活を続け、卒業後は近代五種選手としてマイナビに所属。社会人になって、より選手としての自覚を持って動き出せるようになったと思います。5種目も競技を行うのは大変だと思われがちですが、5種目あるからこそ、一つ失敗してしまっても巻き返しがきく。苦手なものがあっても得意なものでカバーできる、それが近代五種の魅力だと感じています。

競技人口がまだまだ少なく、
練習場所も限定的

練習環境があまり整っていないことが目下の悩みです。国内だと、自衛隊や警察の施設には揃っているのですが、一般だとそうもいかず。射撃の練習も外ではできなくて、「あの人、銃を使っています」と通報されてしまった選手もいたり。結果的に、近代五種選手は警察や自衛隊出身の方がほとんどです。一般だと各種目で練習場所がまとまっていないので、私の場合はプールで泳いだらランスポットへ、以前だと乗馬クラブにも……と移動だけで本当に1日かかってしまうんですよね。馬術に代わり新しく導入されたオブスタクルは、障害物を突破してタイムを競うスポーツ競技なのですが、練習場が千葉県と徳島県にしかないので、施設で実践的に練習する機会もそんなに多くは取れないのが現状です。フェンシングは、父が現在学校と提携して中高生に教えているクラブがあるので、混ぜてもらいながら練習しています。

苦手な種目をメインに、
得意な種目も満遍なく練習

種目別に専任のコーチがいて、日々のスケジュールやメニューを組んでいただいています。朝のスタートはゆっくりめで、お昼から水泳を1時間半〜2時間、午後にラン1時間、フェンシングを1時間半など、1日に2〜3種目ずつ練習することが多いです。なるべく休みの日は作るようにはしていますが、週によってバラバラで何かしら稼働していることもあるので、疲労具合と相談しながら調整しています。もちろん練習がきつく感じることもありますが、慣れに近いというか、それで近代五種が嫌になることもないです。例えば怪我をしてしまって水泳ができなくても、他の種目を頑張る時期にしようと切り替えもできますし、今はランのタイムが少し悪いけどほかは調子がいいから問題ない、などトータルで見ることができるので、モチベーションは維持しやすいのかなと。

勢いのある国では
近代五種がもっと当たり前にある

日本では近代五種はまだまだマイナーな競技ですが、盛んな国では何か所にも施設がありますし、実際に勝ちも多いです。最近だと毎年ワールドカップの開催場所にもなっているエジプト、他にもハンガリーやイタリア、フランスは強いですね。中国は台頭してきていますが、アジアでは韓国が強い印象。私自身も、海外遠征でエジプトやヨーロッパはよく訪れています。意外と一番大変なのが食事面で、あまり訪れたことのない国だと「これはなんだろう?」から始まり、実験的に食べてみることが多いです(笑)。ただ体調を崩すのも怖いので、食事内容はやっぱり気をつけるようにしています。日本食を持って行かれる方もいますが、私は普段から「ないと困る」ものを作らないようにしていて。例えば試合で上手く行かなかった時に、“それがなかったからダメだった”と失敗の理由にしたくないので。ロストバゲージなども経験していて、そのせいで不安な気持ちのまま試合に向き合うのも嫌なので、どんな状態でも挑めるようにしています。

AS A MODEL

モデル活動を通して、
近代五種を知ってもらえたら

スポーツ選手としてファッション撮影にお声がけいただいて。それを機に、モデルとしてのお仕事もありがたいことに広がっています。自分のまた違った一面にも気付けたり、大好きなファッションに携われることが面白いし、楽しく感じています。気分転換にもなるので競技にもプラスに働いていますし、「人より動きがダイナミックだね」と言われたり(笑)、逆にポージングだったりで近代五種が生かされることもあります。こうしたモデルなどの活動を通して、私自身や近代五種をもっと知ってもらえるきっかけになったら嬉しいです。

好きなものを食べて心身回復。
普段からファッションはスポーティ

食事制限は全くしていないです。トレーニングでかなりエネルギーを消費するので、どちらかというと食べるようにしています。練習中はスポーツドリンクを飲むことが多いですが、毎朝スムージーも飲んでいて。父親が作るのにハマっていて、自然と出てくるんです(笑)。ベリー系などの冷凍フルーツとバナナ、牛乳とヨーグルトといったレシピ。睡眠もしっかり取るようにはしていて、タイミングがあれば疲労回復のためにお昼寝することも。普段のファッションは、移動なども多いので動きやすさ重視になりがちです。基本的にはパンツスタイルが多く、デニムも大好きなので、デニムをベースとしたスタイリングやスポーティなテイストがほとんどかもしれません!

FOR FUTURE

ロス五輪を目標に、
力を入れたいのは
新競技であるオブスタクル

今までの種目では、ぶら下がったりする動きがまずなかったので、腕の力で自分の体重を支えるところから始めて。ジムでのトレーニングもメニューに入れてはいるのですが、実用的な方がいいと思い、ボルダリングに通っています。掴んだりぶら下がったりと指力も鍛えられるし、楽しく限界までいけるなと。やっぱり楽しみながら色々なことに挑戦できるほうが、私は長続きするんですよね。オブスタクルに関してはテレビ番組「SASUKE」に出演されている方にアドバイスを伺うこともあります。オリンピックの出場枠は、開催年の2年前に開かれるアジア大会で1名が決定し、残りはワールドカップや世界ランキングのポイントで決まります。日本ではみんなのレベルが拮抗していて、誰がなってもおかしくない状況なので、一つひとつの大会を大切に頑張りたいです。

くじけそうになったら、
勝った時、
成功した時の映像を見返す

それだけ調子がいい時もあったし、練習を積んでいけばまたうまくいく!と考えるようにしていて。そして一番はあまり気負わず、毎回の試合を楽しんでやることを大事にしています。緊張や集中のしすぎ、勝ちたい意欲が前に出過ぎると、試合でも上手くいかないもの。そうならないほうが良い成績が残せると思っていて、最近は意識せずとも、そういうフェーズに持っていけるようになりました。

観客にも近代五種を
もっと楽しんでもらいたい

さっきまで1位だった人が急に最下位になったりと、順位の入れ替わりが激しいので、近代五種は見どころたっぷりなんです。最後の種目がランと射撃なのですが、プレッシャーを感じてしまうと射撃が当たらなくなったり、オブスタクルも急いでしまうと失敗が生まれやすく、落下すると0点になってしまうなどのリスクもあって、とにかく最後まで結果がどうなるか読めない。徐々に抜かれていったりではなく、1種目でバンバンと順位が変わっていく様はゲーム性があって、見ていて面白いと思うので、ぜひ観て楽しんでいただけたら。やっているほうは本当に大変なのですが……(笑)。

選手として、
一歩ずつ確かめながら歩んでいきたい

次のロス五輪までは絶対やり切ると決めているのですが、その次となるとまた4年後。どうしようかと考える年齢でもあるし、オブスタクルに変わったことによって、自分がどれぐらいできるのかも未知数。周りの雰囲気やレベルにも大きな変化があるはずです。馬術は年齢に関わらず挑戦できる印象だったのですが、オブスタクルは多くの人が参加しやすい種目ということもあって、実際に挑戦される方が増加傾向にあるそうなので、参加年齢も下がりそうな気がしています。ただ、「SASUKE」に参加されているレジェンドの方々も年齢に関係なく活躍されているので、私ももっと頑張れるかもしれない。そこは試行錯誤を繰り返しながら、1年1年心身と向き合って、時が来たら考えたいなと思っています。

最後に、今の自分に点数をつけるなら
何点をつけてあげたいですか?

1番難しい質問ですね。
90点ぐらいかな?残り10点は、これからの未来にもう少しの期待を込めて。

profile

才藤歩夢
近代五種競技の選手であった才藤浩氏(ソウル五輪出場、ロンドン五輪代表監督)を父に持ち、幼少の頃より近代五種競技をスタート。五種の中でも得意とするフェンシング競技単体においても、国内トップクラスの実力を誇る。その華やかな容姿を活かし、ファッションブランドのほか、様々なイベントやメディアにも多数出演するなど、活動の幅を広げている。TBS系「KUNOICHI 2025秋」にも出演、活躍を見せ話題に!

instagram@ayumu_saito_

staff

  • Photographer : Toshiyuki Maegawa
  • Edit & Text : Seira Maehara
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