エンターテインメントの仕事から、
フィットネスの世界へ。
怪我をきっかけにヨガと出会い、
その才能を開花するまでの足取りを追いました。
子供の頃から身体を動かすことが好きで、中学から高校まではバスケをやっていました。中学生の頃から腕立て伏せをしたり、自分で筋トレするのが好きでしたね。同時にエンターテインメントの世界に憧れもあったので、高校を卒業してから大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に入って、バックダンサーをやっていました。トレーナーになったのは、元々USJとスポーツジムの両輪で働いていた先輩がいて、その人に誘われたのがきっかけです。面白そうだなと思って転職し、研修を受けてスポーツトレーナーになりました。4年間、ボクササイズやファンクショナルトレーニングなどのクラスを受け持ち、パーソナルトレーナーとして働きました。
トレーナー業もある程度経験を積んで、さて次はどうしようかと道を探っていた頃、大きな怪我をしてしまったんです。友人とウェイトを持ってスクワットジャンプをしていたんですが、トレーニング後に前太ももに違和感を感じて。翌日には感覚がなくなり「これはヤバい!」と。病院に行ったらそのまま入院という事態になりました。今思えばトレーニングのしすぎだったんでしょうね。医者からは「トレーニングを控えてタンパク質も摂りすぎないように」と。人よりアミノ酸の数値が異常に高くて、身体が危険な状態だったんです。
そこからトレーニングへの考え方が180度変わりました。もちろん、プロとしてストレッチや自重の重要性はわかっていたんですが、もっと身体を柔らかくして機能的に動けるようにしないとダメだなと。
怪我がきっかけてヨガを始めようと思い立ち、退院してからLAVAに入会しました。でも、僕自身がスポーツトレーナーだったので、クラスを受けているうちにインストラクターになったほうが習得が早いだろうと。それで、研修を受けてまた教える側へ(笑)。物事は往々にしてそうだと思いますが、自分でやるだけなく、人に伝える方が理解が深まります。教えるために考えることで、自分の身体にもしみ込んでいくんですね。LAVAでヨガを教えながら、「柔らかくする筋肉と強く硬める必要がある筋肉」のバランスを自分なりに考え始めました。“しっかり引き締めながら、怪我をしないしなやかな身体”。そこを目指してあれこれ試行錯誤した結果、ヨガとトレーニングを融合した「ヨグネス」というトレーニングメソッドに辿り着いたんです。
僕のパーソナルトレーニングでは、だいたい30分のヨガをしてから1時間のトレーニングをします。身体を十分に柔らかくしてからその人に合った負荷をかけていくのがポイントです。「ヨグネス」のパーソナルトレーニングを始めたらどんどん枠が埋まってヨガ講師との両立が難しくなったので、思い切って独立しました。インスタのフォロワーが1万人超えたあたりでしょうか。有り難いことに一気に顧客が増えていったんです。インスタは自身のトレーニング動画などを出しているのですが、SNSが上手くいったのは、元々ショービジネスとかエンターテインメントが好きだったので、飽きさせない見せ方がなんとなくわかるというか、そういった経験が役立っているかも知れません。
お客さんは男女がちょうど半分づつ。年齢層も20代から上は60代までバラバラです。大変なことですか?それはみなさんのマインドセットを変えること。トレーニングで失敗するのは、「理想が高すぎる」ということに尽きると思うんです。例えば「こういう身体を目指したい」という思いがあるとしますよね。でも、1回や2回トレーニングではすぐにその身体にはなれない。だから「変わってない!」と落ち込んで自分を責めてしまう方が多いんです。それだとトレーニングを続ける気にもならないので、負のループに陥ります。
だからトレーナーの仕事は「少しの変化に気づかせてあげること」が大事。たった30分のストレッチをやっただけでも身体は十分変わっていますよ、と。呼吸がしやすくなったり、姿勢がよくなったり。その小さな変化に目を向けましょう、と根気よく伝えていきます。トレーナーとして、その方に合ったトレーニングを教えることは簡単ですが、人の「思い込み」を変えることは難しい、とつくづく実感しています。
理想を持つことは大事ですが、高ぎるとダメ。まずは小さな一歩からスタートして、ほんの少しの違いを毎回きちんと理解してもらいます。小さな積み重ねを続けていくうちに、1年後、2年後には身体は確実に変わっていくんですよ。
おととしと去年はバリ島に行って、「RYT500」(全米ヨガアライアンスが認めるインストラクター資格)や、「MIA」、「MIS」という全身の筋肉バランスを整えて強くするヨガの資格を取得しました。海外のヨガは本当にレベルが高いので、自分にとっても刺激になります。今後の目標は、トレーナーとして僕自身のスキルを磨いていきながら、自分で考案した「ヨグネス」をもっと広めていくこと。身体は柔らかすぎても硬すぎてもダメで、どちらかに偏っていると、怪我をしたり上手く機能しなくなります。バランスよく身体を動かしながら理想の身体に近づけていく方法をみなさん伝えていこうと思います。今年からオンラインレッスンも始めたので、より多くの方にアプローチできるんじゃないかな。トレーナーをやっていて一番嬉しいのは、みなさんの身体がどんどん変わっていくことです。そしてお客さんが喜んでくれること。それって、さっきのマインドの話にも繋がるですが、僕とお客さんの間に信頼関係がなければできないことなんです。そうやって人とのつながりを感じられるのも、トレーナー業の醍醐味ですね。
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TAICHI
和歌山県出身。スポーツジムでのインストラクター経験を経て、現在はフリーランスのパーソナルトレーナーとして活躍。自身の怪我をきっかけにヨガを習い始め、その後ヨガのインストラクターに。東京へ移住し、ヨガとトレーニングを掛け合わせた「ヨグネス」をSNSで発信、「しなやかで引き締まった身体づくり」を提唱している。
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