ダンサーMiyuに聞きたい
10のコト

世界一の称号をはじめ、国内外のダンスバトルで数々のタイトルを持ちながら、
SNSで高速ステップをバズらせるなどダンス業界に新風を巻き起こす次世代のダンサーMiyuさん。
これまでもこれからも変わらないダンスへの情熱と、彼女が抱く大きな野望に迫ります。

世界一になっても

変わらなかった景色

19歳でダンスバトルの世界チャンピオンに。
当時の心境や環境の変化は?

私がダンスを始めたのが8歳で、小さい頃からずっと見ていたバトルの大会でした。そこを目指して頑張っていたので、19歳で師匠(HIROさん)と一緒にその舞台に立てたこと、しかも優勝できたことはまるで夢のような時間。「ああ、夢って叶うんだな」と実感した瞬間でしたね。でも同時に、世界一を獲ったからといって自分が世界一上手いと思ったことはないし、むしろその分練習しないとな、という思いも。環境は・・・・・・そんなに変わらなかったですね。そのことを知ってるのは周りのダンサーくらいで、メディアに取り上げられるわけでもなかったし、次の日突然有名になってるということはなかったです(笑)。

ダンスとダンサーが

もっと認められるように

「ダンサーの社会的地位向上」を目指そうと思ったのはいつ頃からですか?

ワールドチャンピオンになった後、ダンサーとしていろんな仕事をしていく中で「ダンサーって世の中に認められていない」と思ったことがきっかけです。例えば振り付けしても名前が載らないとか、ダンスをやってると言えば「誰の後ろで踊っているの?」と聞かれたり、ノーギャラでこれやってください、とか。「あれ?」と思うことがいくつもあって、ダンスってこんなに素晴らしいものだし、素晴らしいダンサーがたくさんいるのに「こんなに認められない職業なんだ!」と思い知りました。それから「ダンサーの社会的地位向上」を目指そうと思っていろんな活動を始めたんです。

ピースフルなダンスを

1秒で惹きつけるように

TikTokでバズった「#高速ステップ」あの動画を作った経緯は?

その大きな目標(ダンサーの社会的地位向上)を叶えるためには、まず自分自身が有名になって発信していかないとな、と。特にハウスダンスは認知度も低いから、これはSNSを頑張るしかない!って。ハウスダンスは元々ピースフルなダンスで、感情をのせたりコミュニケーションを取りながら気持ちよく踊るんです。でもTikTokはすぐにスワイプされるから1秒で人を惹きつけないといけない。だから、わざと高速ステップにして「何これ?どうなってるの?」と多くの人に見てもらおうと。何かをするときに、どうやったら上手くいく?って考えながら物事を進めるのが好きだから、戦略を立ててやったことが上手くいったんじゃないかな。

負けてばかりのダンス人生

自分に才能があるなんて

思ったことがない

これまででMiyuさんの一番の挫折は何ですか?

挫折・・・・・・う~ん。ないかも知れません!(笑)。これまで負けてしかこなかったダンス人生だったから、負けた、悔しい!次は勝とうと、それを繰り返しただけで。そう見えないとよく言われるんですが、実は私、めちゃくちゃ負けず嫌いなんです(笑)。自分にダンスの才能があるなんて思ったことはないし、でも目標に向かって努力することはできるから、それを地道にやるのが自分の才能。だから挫折だと感じる前に、勝つためには何をする?目標を叶えるためにどうすればいい?と考えて次に進みます。今はダンスとダンサーの地位向上だったり、自分のダンスで多くの人を元気づけたりパワーを届けたいという夢があるから、そのモチベーションが努力の源。逆に、それに繋がらないと思うことは一切やりません!(笑)

ダンス業界はアングラこそ、という風潮がありそうですがSNSに不安は?

そうですね。今はダンス動画を上げるのがトレンドになっていますが、ダンサーがそれにのってアップすのは格好悪い、という風潮は確かにあります。「SNSでダンス動画?しかもトレンドの曲で踊るの?」と。実際に周りのダンサーたちから批判されたりもしましたが、それは想定してたことでもあって。でも自分の大きな目標のためには、そんな批判を気にしちゃいられないし、私の思いは広がらないなと思って突き進んできました。同時に王道から外れた活動をする分、ダンスのスキルは落としちゃいけないし、バトルに出たら負けちゃいけないとも思っていました。SNSで発信することと実力、両方ないと説得力がないんじゃないかな、と。

ダンサーは体が資本だと思いますが、普段の食生活を教えてください!

体もそうですし、見られる職業だから肌の調子も気にしています。基本的には3食バランスよく、ですが肌のためにも揚げ物やジャンクフード、お菓子、ジュースはほとんど摂りません。お酒もほぼ飲みません。今26歳なんですが、25を超えたあたりからちょっと気を許すと体が重くなってしまうので食生活はできるだけ気をつかっています!

靴の消耗が激しそうなダンスですが靴はどれくらいの頻度で買い換えますか?

そう見えますか?(笑)でも私は靴を大事に履くタイプで、実はそんなにダメにならないんですよ。靴底がすり減りはしますが、穴が開いたり破けたりはしないので、意外ともちますね。お気に入りはニューバランスのCT05でこれまで何足も買っていたんですが、廃盤になってしまって今は次の靴を探している途中。靴を選ぶときは「軽い、グリップがない、柔らかい」をポイントにしています。色はシンプルな白か黒が基本で、踊るときは事前に床を調べて、床と対向色を選んでいます!

世界大会を経験して

ゆったり構えられるようになった

先ほど挫折はない、と言ってましたがではピンチだったことは?

ピンチはたくさんありますよ!ステージに出て踊り始めたら靴の左右が逆だったとか(そのまま踊り続けるしかない!笑)、グループで順番がずっと後だと思ってたら、実は直前であせって着替えたり。そういうのはいっぱい。よく「落ち着いて見える」と言われるんですが、それは世界大会を経験してからかな?家族がみんな私のダンスを応援してくれるんですが、特に父がメンタル面も鍛えてくれて、今では割とどんなことにもゆったり構えられるようになったと思います。

アウトプットを続けるために

常に自分が潤った状態でいたい

英語が流暢だなと思ったのですが、どうやって勉強したんですか?

英語はまだ勉強中です!オンライン英会話や英会話カフェに行ったり、家では英語のドラマを流したりシャドーイングしたりできるだけ英語漬けにするようにしています。英語を本格的に勉強したいと思ったのは2年前くらいからなんですが、それはやっぱり海外に行き始めてから。ワークショップの講師として呼んでいただくことが多いのですが、英語でレッスンとなると細かいニュアンスを伝えるのが大変で・・・・・・。事前に細かく準備していくんですが、その場の流れで臨機応変にやりたいときに咄嗟に対応できるようにと。言葉の壁がなければ自分ももっと楽しくできるから!

海外活動も多いMiyuさんですが、海外での経験はご自身にどんな影響がありますか?

自分とまったく違うバックグラウンドを持っていたり、これまでの練習の過程も全く違う人たちと一緒に踊ることがすごく良い刺激になっています。普段は表現者としてアウトプットすることが多いので、新しい経験とか価値観に触れて、常に自分が潤った状態でいることを大事にしていますね。今年は特にたくさん海外でのワークショップなどの予定を詰め込んだので、ダンスはもちろん言葉もそうですし、いろんな面でもっと自分を成長させていきたいなと。

それから、毎回思うのは「海外に行くと気づく日本の素晴らしさ」。自分は本当に恵まれているんだなと実感するし、当たり前のことに感謝できるようになりました。これまで行った好きな国ですか?オランダかなあ。時間がゆっくり流れている感じがして、”生き急いでいる自分”にはちょうどいいのかなって(笑)。

profile

Miyu
世界最高峰のバトル大会「JUSTE DEBOUT 2017 WORLD FINAL」でワールドチャンピオンに輝くなど、国内外のバトルで多数のタイトルを持つ世界的ハウスダンサー。
ダンスとダンサーの社会的な地位向上を目指すため、教育現場・公共イベントでのワークショップや講演、ファッションモデルや広告出演など、ダンスシーンにとどまらずさまざまな分野で活動中。 instagram@miyudance_

staff

  • Photography : Lee Kanghyun
  • Hair & Make up : Arisa Muramiya
RETURN